ポッドキャストでゴリラの研究者である山極寿一さんのトークをたまたま聞いた所、ぐっと彼の話に引き寄せられた。なんと、山極さんは、ゴリラの生態を研究するためにアフリカのコンゴにある山地に入り、ゴリラと一緒に生活した経験があるとのことだった!しかも、ゴリラと一緒に生活するために、ゴリラの生活習慣やゴリラならではの作法を習得し、ようやくゴリラの社会に受け入れられたというから心底驚いた。
そして、もっと面白いと思ったのが、ゴリラの社会に受け入れられ一緒に生活したことで、自分自身が一頭のゴリラになって人間社会に戻ってくると、違和感を感じたのだという。人間社会から離れた生活をされた経験を持つ方なんて聞いたことが無かったし、ゴリラから見た人間社会の違和感というものが、とても興味深いと思った!
そんな中で、一番興味深いと思ったのは、「人が必要なのは一人で生きていく力ではなく、誰かに頼る力だ。」という発言だった。そして「誰かに頼り、頼られながら生きるのが本来の人の生き方であり、迷惑をかけあった方がいい!」という発言には驚きと好奇心が生じた。
なぜ頼る力が大事なのかというと、人は集団で生きる動物だから。
例えば、山アフリカのピグミーという狩猟採集民は、家や服、道具、食糧調達も一人でできるのだそう。でも、お互いに協力・分担しあっていて、そこに、生きる幸福感を見出していたのだと言う。人類の進化の過程を見ると、時間を誰かと共有し、お互いに協力・分担しあうことは幸福感を見出す上で非常に大事だった。なので、誰かに頼ることや迷惑をかけること、自分の弱みを見せることは、逆に親切だとも仰っていた。
日本では「迷惑を掛けないように」と子どもの頃から教わり、誰かの迷惑にならないように・・とすごく気を遣っている。でも、他人に迷惑を掛けないようにしたり、自分でなんとかしなければ・・と他者に頼ることを遠ざけることによって、生まれるのは「孤独」だという話に、すごく納得がいった。確かに、お互いに頼り、頼られる存在がいるということは、心の安寧にも繋がるし、頼れる人がいることは安心感が持てるし、頼られることで嬉しさを感じることもできる。人に頼ることを迷惑だとはき違えてしまっている自分にも気づかされた。
また、私自身、留学と仕事で8か国で長期的に暮らしたけど、貨幣経済と離れた生活をしている地域程、コミュニティで協力・分担しあっていて、幸福度が高いように感じた。特に、私が20年程前に2年半赴任していたベトナムの山岳地帯で暮らす少数民族の方々は、各家庭で生活というよりも隣近所の人たちと協力して畑仕事をしたり、市場まで売りに行ったり、水汲みをしたりと、地域の人たちが協力しあっていた。そこには会話や笑いが常にあって活気があって、孤独とは無縁の生活だった。家族がすぐそばにいて、日本での自分の生活を思い出しては、経済の発展は人にとって大事なことなのだろうか?と当時考えたこともあった。
「他者と時間を共有することを面倒で迷惑なことだと感じる人も増えているようですが、そうやって他者との時間を遠ざけることによって、人々はますます不安や閉塞感を感じることになるんです。」という言葉には、心から共感する。
これからの生き方を考えていく上で、山極さんの指摘はとても大事な気づきを与えてくれるのではと思う。高松市の中央図書館にも置いてあるので、ぜひ読んでみて下さい。
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