インタビュー

「父母の恩、社会の恩、郷土の恩、そして大自然の恩に報いる人間に。」


公益財団法人 喝破道場

野田 大燈 さん

2016年9月4日(日)

五色台の大自然の山の中に位置する喝破道場。

自給自足の生活や、座禅・読経・農作業などを通して、子ども達が自立して生きる力を養うことを目指す。そんな 喝破道場の理事を務め、他にも、児童福祉施設や児童心理治療施設などで子ども達の社会的な自立をサポートする野田大燈氏に話を伺った。

Q:喝破道場を立ち上げたきっかけは?
- 私は、もともとサラリーマンをしていたんです。

その頃、「生き甲斐って何だろう?」「何のために生きているんだろう?」と悩んでいたことが・・・。そんな中、禅宗のお坊さんとご縁があって、禅の教えを聴くようになりました。

 

禅宗は大変シンプルで、『いかに生きるか』ということを説いているんです。禅宗の修行を通じて、私は「何のために生きるのか?」という問いに対する答えを見いだせたように思います。私が修行を通して助けられたように、人生に悩む人が修行できる場を創りたいと思ったのです。
 
Q:なぜ五色台に道場を?
- この土地は、もともと父が持っていて、売らないといけない状況に陥ったのですが、売れずに残っていたのです。畑をするには斜面すぎて使い勝手が悪かったからです。

 

ちょうど、私は禅宗の修行を終えても帰るお寺が無かったので、父のお墓替わりにこの土地を使おうと思いました。私がこの山に入った時には、道も無く、住む建物も無かったんですよ。でも、悩んだり苦しんだりしている人達を救いたいという思いに共感してくれる方々が、 いろんな形で応援してくれました。

 

例えば、住む家が無かった私に、お醤油屋さんが醤油樽を下さったんです。しばらく、その樽の中で生活していました。

すると、五色台に変な坊さんがいると評判になり、コトデンバスの大西元社長が会いに来て下さり、廃車になったバスを下さったのです。

 

そこで、バスの中のイスを 全部取っ払って、畳を敷いて、研修道場や本堂、食堂、寝床として活用していました。他にも、中古のプレハブや活動資金をいただいたり、いろんな人達がいろ んな形で支援して下さり、ここを拠点として事業ができるようになりました。

Q:事業をしながら感じるやりがいは?
- 生きている人達の手助けとなることをすることが大きなやりがいですね。

私は、サラリーマン時代から、病気の治癒に関心があり、鍼灸師の資格を持っているんですよ。今、ハーブ園でローズマリーを栽培しているのですが、精神疾患を持っている子ども達にアロマテラピーとしての効力があるということに気づきました。

 

ハーブ園での草ぬきが作業療法になり、ハーブが売れるようになったら就労先にもなります。こうして私が手掛けていることが人を救済することに繋がるのはうれしいですね。

実は、江戸時代まではお寺は生きている人達を救済していたんです。お葬式や法事など、人の死後に関わるようになったのは、江戸時代以降なんです。かつての お寺のように生きている間に救済し、かつ、死を迎える時にはみんなで看取って供養してあげたいと思っています。それが、ここにいる人達の安心にも繋がりま すからね。

 

Q:事業を通して感じる難しい点は?
- 坊主の商法は商売が下手と言いますが、なかなか儲からないですね(笑)。

私は、人真似が大嫌いで、人がしないことをしているのが原因かもしれませんね。 今、3千坪程のハーブ園をしているのですが、「こんな広い土地にローズマリーだけを植えるなんて何を考えているのか?」と言われたこともあります。最初は百種類くらいのハーブを植えてたのですが、これくらいの規模のハーブ園はどこにでもあるので、ハーブを特化しなさいと言われたんです。

 

それで、ローズマ リーに特化することにしたんです。今ではローズマリーの注文が増え、正しい選択だったと思っています。振り返ると、事業をする中で、ヒントを下さる方が現れるんです。そのヒントをどのように実現するかが私の修行だと思っています。

Q:子ども達と接しながら感じることは?
- 子どもと接しながら感じるのは、子どもが変わってきているように思います。

ちょっとしたことで傷ついたり、心の問題を抱えている子どもが増えてきたように思います。その背景には、過保護や過干渉があるのでないかと思うんです。ここは、海抜400メートルの五色台の山の中に位置しますが、子ども達は環境に順応して生活しています。子ども達は新しい環境に適応できる能力を持っていて、いろんな可能性を秘めているということを大人の人達に知って欲しいと思いますね。そして、子ども達が、自分の足で歩いていけるような人間に育って欲しいと思います。

公益財団法人 喝破道場(かっぱどうじょう)
理事長・施設長
野田大燈

 

Profile
1974年、得度。1984年に公益財団法人「喝破道場」を設立し、同法人の理事長及び社会福祉法人「四恩の里」の施設長を務める。
・正力松太郎賞受賞
・キワニス社会公益賞受賞
・第42回仏教伝道文化賞受賞


住所:香川県高松市中山町五色台