インタビュー

雑誌編集長・コピーライター 2つの仕事・視点を持つ面白さ


株式会社 瀬戸内人

『せとうちスタイル』編集長/コピーライター 山本 政子さん

2017年11月1日(水)

瀬戸内の生き方・暮らし方を紹介する雑誌『せとうちスタイル』

今回は、その雑誌の編集長である山本政子さんにインタビューさせていただきました。

-最初に山本さんのお仕事内容を教えて下さい。
 私はコピーライターをずっとやっていて、現在でも色々な会社の広告やパンフレット作り、ネーミングなどの仕事をしています。

そして、(株)瀬戸内人では『せとうちスタイル』編集長として雑誌の企画から記事作成までをやっています。

 

-2つの仕事をやっていて、これは雑誌編集だからこそできることだ、と感じることはありますか?
 そうですね、コピーライターの仕事は、クライアントの想いや商品の物語などを言葉にして伝えます。そのため、自分の思いをストレートに伝えるということはあまりありません。

 一方で、『せとうちスタイル』では編集長として、またチーフライターとして、自分の文章を書きます。最初はこんなにも自由に書いていいんだ、と思いました。

 コピーライターと雑誌の編集長。2つの仕事、2つの視点を持つことができるのは面白いですね。

 

言葉を生み出すのではなく、見つける

 

-『せとうちスタイル』の企画は、山本さん1人でやっているのですか?
 基本的には、まず私がひとりで考えて、その後、編集会議などで決定していくという感じです。

私は、10年前から瀬戸内の島々にうかがっていて、島で出会った人の中には10年以上お付き合いのある方も少なくありません。その中でのつながり・蓄積が、今の『せとうちスタイル』の企画につながっています。瀬戸内国際芸術祭が始まる前から島を見てきているからこそ伝えられることがあるとも思っています。例えば、島や島の人たちが芸術祭を通してどう変わったかを自分の経験を通して書くことは、長く島を見てきたからこそ書けるのではないかと思います。

 

-『せとうちスタイル』Vol.2表紙の「人生には、瀬戸内が必要だ」というキャッチコピーがとても素敵だな、と思いました。そのようなキャッチは、どのように生み出しているのですか?
 ずっと考えてますね。コピーライターの仕事やこういったキャッチを作ることは、奇抜な言葉を生み出していくことだと思われがちですが、『せとうちスタイル』のキャッチフレーズを読んでもらってもわかるように、私が書くものは、普段の皆さんが話している普通の言葉が多いんです。なので、コピーはつくるというより、見つけるという感じです。

 日々の生活や自分の記憶の中から生まれた言葉なので、もしかしたら皆さんが共感してくれて、素敵だな、って思ってくれるんじゃないかなぁと思います。

 

-瀬戸内の生き方・暮らし方をテーマにした雑誌を作ろうと思ったのはなぜですか?
 香川に来て、海がすごく近くて、そこにぽこぽこと島があったり、日常の中に船があったりするのが素敵だなぁと思ったんです。船は移動手段ですが、島に行こうと船に乗ると、まるで小さな船旅みたいで。なんて幸せなんだろうと思いました。『せとうちスタイル』というタイトルをつけたのも、そんな瀬戸内で暮らす幸せがひとつのスタイルになって、広まっていけばいいなぁと思ったからです。
 また、島に通う中でたくさんの方にお会いしました。そんな島のみなさんの生き方、暮らし方も届けたいですし、島の文化や歴史なども誌面を通して伝えていくことで、残していきたいとも思っています。

 

-島の人に取材をする時って、島に数日間滞在してするんですか?
 日帰りの時もあれば、数日間滞在することもありますが、『せとうちスタイル』の特集に出て下さっている方は、取材までに何回かお会いしたり、昔から知り合いだった方が多いです。

 

-そうなんですね。山本さんが記事を書くうえで、大切にしていることは何ですか?
 記事を書くときには、ひとつひとつの言葉を大切にしています

 例えば、「美しい」と感じたことをただ「美しい」と書くのではなくて、他の言葉に置き換えたらどうだろうとか、他の表現方法はないだろうかと考えたりします。

 

雑誌を開いたときに瀬戸内の風が吹いてほしい。

 

-『せとうちスタイル』の記事を読むと、瀬戸内のことを考え、心が穏やかになる理由が分かったような気がします。
 ありがとうございます。

 この雑誌には、瀬戸内で作られたものを紹介・販売する通販カタログページがあります。島のお母さんたちが作ったものを販売するお手伝いができたら励みにもなるのではと思いましたし、瀬戸内に暮らしていない方たちには商品を通じて、瀬戸内を感じてもらいたい、島に行こうと思ってもらうきっかけになればと思って作りました。
 また、島のお母さんが作るものは、時期が限られていたりするので、ある時期を逃してしまうと、1年待たないと購入できない、ということもあります。それを待ってでも欲しい、と言って下さる方がいると思うんです。1年待ってでもほしい商品を紹介できるのは『せとうちスタイル』ならではだと思います。

 

-話が少し変わりますが、山本さんは、このお仕事をしていて辛いな、大変だなと感じることはありますか?
 基本書くことが好きですし、人に会ったり、その人の物語をちゃんと伝えたい、と思っているので、この仕事は楽しいです。

 締め切りが近くなってくると、大変だ・・・となりますが、取材させていただいた方が雑誌を見て「今までこんなふうに思いを記事にしてくれたことはなかった、ありがとう。」と言ってもらえると、嬉しくて辛いことも忘れられます。

 そういった意味では、恩返しをしたいとも思っています。

 最近、島を歩き始めた頃に一番お世話になった方々がお亡くなりになったりしていて、そういった方に自分は何かの形でお返し出来ているのかを考えると、まだまだ出来ていないと思っています。

 

-そうなんですね。でも、この雑誌1冊を作るのってとても大変なことですよね?
 そうですね。でも、社内をはじめ一緒に作ってくれる仲間が瀬戸内にはたくさんいます。号を重ねるごとに、皆がいるから今の雑誌が作れているのだと感じています。

 

-山本さんの瀬戸内で出会った人とのつながりを大切にしていることが、せとうちの表情を伝える雑誌『せとうちスタイル』ができることにつながっているのだと思いました。

 そして、「言葉は生み出すんではなくて見つけている」という話を聞いて、私も日々アンテナを張り巡らせながら、人に寄り添えるような言葉を綴れるようになれたらいいなぁと思いました。

 ご協力ありがとうございました。

★インタビューを終えて・・・
 インタビュー記事には書けなかったのですが、山本さんが『せとうちスタイル』Vol.2の特集のため、移住者の方に取材をしたときに聞いたというお話が面白かったです。移住者の方にとって、島での生活はスローライフではないみたいなんです。私の中で、島での生活は1日の半分を瀬戸内海を眺めながらのんびりと暮らせるものだ、と思っていました。でも、実際は半年前からお祭りのために踊りの練習をしたり、「雨漏りがする」と呼ばれたり・・・、そんな忙しい日々を送っているということが驚きで、面白かったです(笑)

 

(鹿児島大学 農学部/松原 萌)